【奥田浩美ブログ】
結婚三十三年に寄せて
結婚三十三周年を迎えました。思えば、夫と出会ってから実に四十一年という歳月が流れたことになります。
そしてこれまでSNSでも公開したことのない写真を披露します。結婚のパーティーにて、二人でワルツを踊りながら登場した、若き日の私たちです。こうして振り返ると、型破りなことを好む性質は、当時からのものだったのかもしれません。
夫との邂逅は、大学の舞踏研究部。華やかな競技ダンスの世界に足を踏み入れたものの、実のところ、私は入部からわずか半年で、その扉を自ら閉ざしてしまいました。
生まれ持った天邪鬼な性質か、年功というだけで序列が決まる部の空気にも、そして、男性が「リーダー」として女性を導くというダンスの世界の伝統にも、私は素直に馴染むことができなかったのです。今にしてそういった反発心こそが私らしく、これまでの私という人間を形成する、紛れもない一部だったのでしょう。
そんな短い間の部活の中で巡り合ったのが、リードがあまり得意ではなかった、後の夫となる彼でした。
その彼が、これほど永きにわたり私を支え、傍らに在り続けてくれたという事実に、不思議な縁を覚えます。
競技ダンスにおいて、男性のリードは、女性を最も美しく輝かせるためのもの。
フロアで主導権を握るのは男性。一方で競い合うことも好き、リードすることも好きな女性である私。対して、彼はただ音楽に身を任せ、楽しむことを優先するまさに真逆なカップルでした。
二人のステップは競技ダンスの場において調和することは、ついぞありませんでした。彼は華麗なリードテクニックで私を導く、というタイプではなかったかもしれません。
しかし、人生という名のダンスにおいては、彼こそが私の最高のパートナーでした。
私が壁にぶつからぬよう、足元のもつれに倒れぬよう、進むべき道を見失わぬよう。リードはしないけれど見つめてくれている。何より、私が私自身の本質を見失わず、内なる光を放ち続けられるよう、彼は常に、言葉にはならぬ深い眼差しをもって支え続けてくれていたのです。
その静かで揺るぎない愛情に、ただ感謝の念が込み上げるばかりです。
束縛を嫌い、時に彼の差し伸べる手を振り払い、独り舞台で踊りたがる私。そんな奔放な私の姿も、彼はおそらく、どこか遠くから見守っていてくれたのでしょう。そして、ひとしきり踊り疲れたり、バランスを崩し、倒れそうになるその刹那には、必ず彼の温かな手がそこにある。私たちは、そんな言葉を超えた信頼の絆で結ばれているのだと、今、静かに感じています。
互いに還暦という人生の大きな節目を越えたなら、もう一度、二人でフロアに立ってみるのも良いかもしれません。
私たちのダンスはこれからどんな物語を紡ぐのでしょうか。
それもまた、これからの人生のささやかな楽しみに。