カンファレンスにおけるDEIの重要性


【奥田浩美ブログ】【登壇ログ】

「Event for HER & Beyond」

今日はカンファレンスにおけるDEIの重要性というテーマのセッションに登壇してきました。そこで話した(+話したかった)ことの一部を書き残しておきます。
<カンファレンスで本当に大切なのは「ダイバーシティ」の先にある「インクルージョン」>
カンファレンスの世界でも、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)への意識は急速に高まっています。登壇者の属性バランスを整え、多様な参加者を歓迎する。これらは間違いなく重要な一歩です。しかし、私たちは時として「ダイバーシティ」という言葉が持つ分かりやすさに目を奪われ、その本質を見失いがちではないでしょうか。

【「多様性」の見た目と、そこに潜むアンバランス】

例えば、あるセッションで登壇者が5名いたとします。そのうち3名が女性で、2名だけが男性だったとしましょう。数字の上では、これは女性がマジョリティであり、ダイバーシティの一つの形と呼べるかもしれません。しかし、もしその場で、その2名の男性がレジェンドとかと呼ばれ過度に持ち上げられ、他の3名の女性がその男性の発言を補佐するような役割に終始していたとしたら?それは本当に多様な意見が活かされていると言えるでしょうか。
あるいは、スタートアップの華やかなネットワーキングの場で、多くの若い女性スタッフに囲まれ、ご満悦な表情を浮かべる年配の権威ある男性。皆さんも一度は目にしたことがある光景かもしれません。そこには確かに多くの女性が「存在」していますが、彼女たちは本当に「心地よく」そこにいるのでしょうか?権威ある男性に気を使い、自由に振る舞うことをためらってはいないでしょうか?
これらの例は、単に属性の数を揃える「ダイバーシティ」だけでは「インクルージョン」には程遠いことを示唆しています。ダイバーシティは「誰がいるか」を示すものですが、インクルージョンは「その人たちがどう感じ、どう関わっているか」を問うものなのです。

【インクルージョンの核心は「全員の心地よさ」と「対等な尊重」】

私がカンファレンスプロデューサーとして最も大切にしたいのは、まさにこの「インクルージョン」です。それは、参加者一人ひとりが、属性に関わらず「ここにいていいんだ」「自分は歓迎されているんだ」と心から感じられる状態。そして、誰もが萎縮することなく、自分の意見や考えを安心して表明でき、それが他者から尊重される環境です。
大切なのは、「心地よく振る舞えているか?」「同じように居心地がいいか?」という問いです。これは、マイノリティとされる人々だけでなく、マジョリティとされる人々も含め、その場にいる全員が感じられるべきものです。一部の人だけが快適で、他の人が緊張や疎外感を抱いているとしたら、それは真にインクルーシブな場とは言えません。

【インクルーシブなカンファレンスを創るために】

では、どうすればそのような場を創り出せるのでしょうか。それは一朝一夕に達成できるものではありませんが、プロデューサーとして意識し、取り組めることは数多くあります。
企画の段階からチームの中にインクルージョンを織り込むこと。この部分で私が大切にしていることはまた別の記事に書きたいと思います。

【ダイバーシティは始まり、インクルージョンが真価】

ダイバーシティは、インクルーシブな環境を築く上での重要な要素であり、目指すべき状態の一つです。しかし、それ自体がゴールではありません。多様な人々が集うという「状態」から一歩進んで、その多様性が真に活かされ、一人ひとりが尊重され、能力を最大限に発揮できる「環境」=インクルージョンを実現すること。
カンファレンスの真の価値は、そこで生まれる新たな気づきや繋がり、そして参加者一人ひとりの成長にあると信じています。そして、それは、誰もが「自分らしくいられる」インクルーシブな空間があってこそ、最大限に花開くのです。プロデューサーとして、そのための努力をこれからも続けていきたいと考えています。